80点の彼女あとがき
1、タイトルの「80点の彼女」は、リサだけでなくカノンにもかかっているように感じました。この“80点”という言葉に、どんな意味を込めましたか?
80点という数字から、「まあ悪くはない点数だよね」という印象を持つ人は多いと思います。
この作品での80点は、リサの初恋の相手であるカイルにとって、彼女が特別な存在ではなかったことを示しています。
同時に、自分より上の「100点」が他にいるという劣等感の象徴でもあります。
カノンに80点を与えたのも同じ理由で、彼女自身のセリフにあるとおり、「合格」だったからラハは彼女を受け入れた。
けれど、本気で夢中になってはもらえなかったという、カノンなりの悲しみを表したかったんです。
カノンを、リサのコンプレックスを刺激するためだけの存在にはしたくありませんでした。
だからこそ、一見完璧に見える彼女にも、別の形で80点という痛みを背負わせています。
2、今回のリサは、嫉妬や不安からかなり感情的に動きます。光の戦士である彼女に、あえて弱くて未熟な面を出した理由は何ですか?
ありがちな発想ですが、英雄と呼ばれる彼女でも、恋をすれば普通の女性と何ら変わらない。
不安になることもあれば、感情を抑えきれなくなることもある。
そうしたリアルな部分を描きたかったんです。
作者自身の弱さも部分的に投影しているので、良くも悪くもリサが揺れる描写には生々しさが出たと思います。
読者のリサへの好感度が気にならないと言えば嘘になりますが、こういうリサも自分としては結構好きです。
3、カノンは単なる恋敵ではなく、彼女自身も傷ついた一人として描かれていました。カノンを書くうえで意識したことはありますか?
都合よく現れて、都合よく退場するキャラクターに見えてしまうことが、一番の懸念でした。
だから、彼女にもきちんと想いがあり、悲しみがある人物として書きたかった。
彼女の引き際の潔さが、ご都合主義ではなく彼女自身の良い意味でのプライドに見えるよう意識しています。
これがうまくいったかどうかは、読んでくださった方の判断に委ねるしかありませんが。
この作品で最も気を使ったのが、カノンというキャラクターの扱いだったのは間違いありません。
4、ラハが「誠実であることによって人を傷つける」側面を持っている、という描写が印象的でした。今回のラハには、どんな課題を背負わせたつもりでしたか?
優しさや誠実さも、向ける相手を選ばなければならない場面がある。
誰も傷つけない選択肢が、存在しないこともある。
若気の至りでした選択を、後悔という形であらためて思い知る。
本当に誠実に向き合いたい相手は誰なのか。
何を選び、何を諦めるのか。
それが今作で、彼があらためて考えたことだと思っています。
その結果として、カノンもリサも傷つけてしまった。
だからこそ、この物語で彼に必要だったのは「誰にでも優しい人」であることではなく、「リサを選ぶ人」になることだったのだと思います。
5、ラストでリサが「安心しているからラハを求める」と自分で選ぶ展開になっています。この場面で大事にしたかったことは何ですか?
正直なところ、ロマンチックな場面を書くのはいまだに恥ずかしくて苦手です。
R-18を書ける方の頭の中を、一度覗いてみたい気持ちがあります。
このシーンに込めた裏のメッセージとしては、二人の関係においてはリサのほうが主導権を握っている、ということなのかもしれません。
このシリーズ全体に通じる話ですが、リサのラハへの信頼が揺るがないとき、彼女はのびのびと自分の意思で物事を選び取ります。
その選択を、彼が心から肯定してくれると信じられるからです。